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DAT(Digital Audio Tape)とは?意味をわかりやすく簡単に解説

text: XEXEQ編集部


DAT(Digital Audio Tape)とは

DATはDigital Audio Tapeの略称で、デジタルオーディオテープのことを指します。1980年代後半に登場したデジタル式のオーディオテープフォーマットの一種です。

DATはアナログ式のコンパクトカセットに比べ、ノイズが少なく高音質な録音・再生が可能でした。また、デジタル信号で記録されるため、複製による音質の劣化がほとんどありませんでした。

DATの規格ではサンプリング周波数が48kHz、量子化ビット数が16bitとなっており、CDと同等の音質を実現していました。一方で、テープ幅が3.81mmと非常に狭く、テープ自体が非常にデリケートであるという特徴がありました。

DATは主にプロ用の録音や放送局での使用を想定して開発されました。しかし、高価であったことやCDの普及などにより、一般家庭での使用はあまり広がりませんでした。

DATは現在ではほとんど使用されていませんが、デジタルオーディオ技術の発展において重要な役割を果たしたフォーマットの一つと言えるでしょう。DATの登場により、高音質なデジタル録音が可能になったことはその後のデジタルオーディオ技術の発展に大きな影響を与えました。

DATの録音・再生方式

DATの録音・再生方式に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • DATのヘリカルスキャン方式
  • DATのロータリーヘッド機構
  • DATのエラー訂正機能

DATのヘリカルスキャン方式

DATはヘリカルスキャン方式を採用しています。ヘリカルスキャン方式とはテープを斜めに走査することで高密度な記録を実現する方式です。

具体的にはテープを斜めに巻きつけたドラムに記録用のヘッドを取り付け、テープを回転させながら記録・再生を行います。これにより、テープの幅方向だけでなく、長手方向にもデータを記録できるため、高密度な記録が可能になりました。

ヘリカルスキャン方式の採用により、DATは狭いテープ幅でも長時間の録音が可能となっています。また、高速回転するヘッドにより、高い周波数帯域の信号も記録・再生できるため、高音質な録音が実現できました。

DATのロータリーヘッド機構

DATはロータリーヘッド機構を採用しています。ロータリーヘッド機構とは記録・再生ヘッドを回転させることで、テープとの相対速度を高める仕組みです。

DATでは2個の記録・再生ヘッドが取り付けられたドラムを高速で回転させます。これにより、テープとヘッドの相対速度が高くなり、高密度な記録と高速な記録・再生が可能になりました。

ロータリーヘッド機構の採用により、DATは小型のカセットでも長時間の録音と高音質な記録・再生を実現しています。また、高速回転するヘッドにより、テープとヘッドの接触時間が短くなるため、テープの摩耗を抑えることができました。

DATのエラー訂正機能

DATは強力なエラー訂正機能を備えています。エラー訂正機能とは記録・再生時に発生するエラーを検出し、修正する機能のことです。

DATでは記録時にパリティビットと呼ばれる誤り検出用のデータを一緒に記録します。再生時にはこのパリティビットを使ってエラーの検出と訂正を行います。

DATのエラー訂正機能は非常に強力で、高いエラー訂正能力を持っています。これにより、テープの傷やごみなどによるエラーが発生しても、自動的に修正されるため、安定した再生が可能になりました。

DATの規格と仕様

DATの規格と仕様に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • DATのテープ規格
  • DATのオーディオ規格
  • DATのサンプリングレートとビット深度

DATのテープ規格

DATにはテープ幅やテープ長などの物理的な規格が定められています。DATのテープ幅は3.81mmで、非常に狭くなっています。

テープ長はStandard(60分、90分)とLong Play(120分、180分)の2種類があります。Long Playモードではテープ速度を半分にすることで長時間の録音が可能になりますが、音質は若干劣化します。

DATのテープは非常に薄く繊細なものとなっています。そのため、取り扱いには十分な注意が必要で、ほこりやごみ、強い衝撃などから保護する必要がありました。

DATのオーディオ規格

DATのオーディオ規格は48kHzのサンプリング周波数と16bitの量子化ビット数を採用しています。これはCDと同等の音質を実現するための規格となっています。

DATではアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換と、デジタル信号をアナログ信号に戻すD/A変換が行われます。これらの変換処理は高品質な専用チップで行われ、高い変換精度を実現しています。

また、DATにはCopyright Protection System(CPS)と呼ばれる著作権保護機能が搭載されていました。これにより、市販のDATテープからのデジタル録音は制限されていました。

DATのサンプリングレートとビット深度

DATのサンプリングレートは48kHzと32kHzの2種類が規格として定められています。48kHzはCDと同等の音質を実現するために採用されたサンプリングレートです。

一方、32kHzは長時間録音モードで使用されるサンプリングレートで、テープ速度を遅くすることで録音時間を延ばすことができます。ただし、音質は48kHzモードに比べて劣化します。

DATのビット深度は16bitに固定されています。16bitはCDと同等の量子化ビット数で、高いダイナミックレンジと低いノイズレベルを実現しています。

DATの利用用途と普及状況

DATの利用用途と普及状況に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • DATのプロ用途での利用
  • DATの一般家庭での利用状況
  • DATの現在の利用状況と後継フォーマット

DATのプロ用途での利用

DATは主にプロ用途での利用を想定して開発されたフォーマットです。特に、音楽制作のスタジオや放送局などで広く使用されました。

スタジオではマスター録音やミックスダウンの際にDATが使用されていました。DATの高音質な記録性能により、オリジナルの音質を忠実に記録することができました。

放送局では番組の収録や音源の保存にDATが使用されていました。DATの小型で扱いやすいカセットは取材現場などでの録音に適していました。また、デジタル信号で記録されるため、複製による音質劣化がないことも放送用途では重要な特長でした。

DATの一般家庭での利用状況

DATは一般家庭での利用はあまり広がりませんでした。その主な理由は高価な価格設定にありました。

DATデッキは発売当初は数十万円もする高価な製品でした。また、DATテープも1本数千円と、一般的なカセットテープに比べて非常に高価でした。

さらに、CDの登場と急速な普及により、一般家庭ではCDが主流となっていきました。CDはDATと同等の音質を実現しながら、より扱いやすく手軽なメディアでした。そのため、DATは一般家庭での利用が広がることはありませんでした。

DATの現在の利用状況と後継フォーマット

現在ではDATはほとんど利用されなくなっています。デジタルオーディオ技術の発展により、より利便性の高いフォーマットが登場したためです。

DATの後継フォーマットとしてはMDやCD-R、ハードディスクレコーダーなどが登場しました。これらのフォーマットはDATと同等以上の音質を実現しながら、より手軽に録音・再生ができるようになっています。

特に、ハードディスクレコーダーの登場により、長時間の録音と高速なランダムアクセスが可能になりました。また、パソコンを使った音楽制作の普及により、デジタルデータでの音源管理が主流となり、テープメディアの利用は減少していきました。

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