アイリス社がAIで咽頭画像から性別推定、医療診断の新たな可能性を開拓

text: XEXEQ編集部
（記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります）

PR TIMES より

記事の要約

アイリス社がAIで咽頭画像から性別推定
高精度な推定結果をScientific Reportsで発表
咽頭画像の医学的有用性を示唆する成果

アイリス社のAI医療機器開発と咽頭画像分析の新展開

AI医療機器開発のアイリス株式会社は、咽頭画像から性別を推定するAIアルゴリズムに関する最新の研究成果を2024年9月13日に発表した。この研究では、深層学習モデルを用いて咽頭撮影用カメラで撮影した画像から性別を高精度（AUC 88.3%）で推定することに成功している。特に20～40歳と40歳以上のグループでは極めて高い精度（それぞれAUC 96.5%、AUC 96.3%）を示し、第二次性徴以降の性差が顕著に反映された結果となった。^[1]

この研究成果は、咽頭画像データの医学的有用性を実証するものとなっている。先行研究では眼底写真からアルツハイマー病やパーキンソン病、心筋梗塞など様々な疾病の有無やリスクをAIが判定できたとする報告があり、豊富な血管情報を含む咽頭写真にも同様のポテンシャルが期待されている。アイリス社は、この研究を基に診断技術のさらなる進歩を目指し、医療現場の課題解決に向けて注力する方針を示している。

研究論文は「Scientific Reports」に掲載され、著者にはHiroshi Yoshihara、Memori Fukuda、Takaya Hanawa、Yusuke Tsugawaが名を連ねている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川友介准教授は、この研究を「医学診断および医学研究におけるAIのポテンシャルを示唆する画期的な研究結果」と評価し、咽頭の解剖学的構造における性差の新たな発見の可能性を指摘している。

アイリス社のAI医療機器開発成果まとめ

	研究内容	精度	対象年齢群	掲載誌
主な成果	咽頭画像からの性別推定	AUC 88.3%	全年齢	Scientific Reports
年齢別精度	20～40歳の性別推定	AUC 96.5%	20～40歳	同上
年齢別精度	40歳以上の性別推定	AUC 96.3%	40歳以上	同上
研究の意義	咽頭画像の医学的有用性実証	-	-	-
将来の展望	様々な疾病診断への応用可能性	-	-	-

深層学習について

深層学習とは、人工知能（AI）の一分野である機械学習の手法の一つで、多層のニューラルネットワークを用いて大量のデータから特徴を自動的に学習する技術のことを指す。主な特徴として以下のような点が挙げられる。

複雑なパターンや抽象的な特徴を自動的に抽出できる
大量のデータを効率的に処理し、高精度な予測や分類が可能
画像認識、自然言語処理、音声認識など幅広い分野で応用される

アイリス社の研究では、この深層学習技術を咽頭画像の分析に適用することで、高精度な性別推定を実現している。この成果は、医療分野における深層学習の有効性を示すとともに、従来は見過ごされていた咽頭画像の持つ情報の重要性を浮き彫りにした。今後、この技術を基盤として、様々な疾病の早期発見や診断支援などへの応用が期待されている。

アイリス社のAI医療機器開発に関する考察

アイリス社による咽頭画像からの性別推定AI開発は、非侵襲的な診断技術の新たな可能性を示唆している。この技術が進化すれば、従来の侵襲的な検査に代わる簡便かつ高精度な診断方法として、患者の負担軽減と医療コストの削減に大きく貢献する可能性がある。一方で、AIによる判断の透明性や説明可能性の確保、また個人情報保護の観点からのデータ管理など、倫理的・法的な課題にも十分な配慮が必要となるだろう。

今後の課題として、性別推定以外の医学的情報の抽出や、より広範な年齢層でのデータ収集が挙げられる。また、他の画像診断技術との組み合わせによる総合的な診断システムの構築も重要な研究テーマとなるだろう。さらに、AIの判断を補完し、最終的な診断の質を向上させるための医師向けトレーニングプログラムの開発も必要となる可能性がある。

アイリス社には、この技術をさらに発展させ、咽頭画像から様々な疾患のリスク評価や早期診断を可能にするAIシステムの開発を期待したい。同時に、産学連携を通じて基礎研究を強化し、AIの判断根拠をより明確にする研究も重要となるだろう。医療AIの社会実装に向けては、技術開発と並行して、倫理的ガイドラインの策定や、AIを活用した医療サービスに対する保険適用の検討など、制度面での整備も進めていく必要がある。