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DES(Data Encryption Standard)とは?意味をわかりやすく簡単に解説

text: XEXEQ編集部


DES(Data Encryption Standard)とは

DES(Data Encryption Standard)は1977年に米国国家標準局(現在の国立標準技術研究所)によって策定された共通鍵暗号方式の一つです。DESは64ビットのブロック長と56ビットの鍵長を持ち、対称鍵暗号の代表的な方式として長年使用されてきました。

DESはセキュリティ強度の観点から現在は推奨されていませんが、暗号技術の発展に大きく貢献した暗号方式と言えるでしょう。DESの暗号化プロセスは初期置換、鍵スケジュール、16ラウンドの暗号化処理、最終置換の4つのステップで構成されています。

DESの暗号化処理では平文を64ビットのブロックに分割し、各ブロックに対して16ラウンドの暗号化処理を施します。各ラウンドでは56ビットの鍵から48ビットの部分鍵を生成し、これを用いて平文ブロックを変換していきます。

DESの復号化処理は暗号化処理の逆の手順で行われます。最終置換の逆置換、16ラウンドの復号化処理、初期置換の逆置換を経て、元の平文を得ることができるのです。

DESは現在では安全性が十分ではないとされていますが、暗号技術の発展に大きな影響を与えた暗号方式であり、その設計思想は後続の暗号方式にも引き継がれています。トリプルDESやAESなどの暗号方式はDESの設計思想を基に開発されたものなのです。

DESの暗号化・復号化プロセス

DESの暗号化・復号化プロセスに関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • DESの暗号化プロセスの4つのステップ
  • DESの16ラウンドの暗号化処理の詳細
  • DESの復号化プロセスと暗号化プロセスの関係性

DESの暗号化プロセスの4つのステップ

DESの暗号化プロセスは初期置換、鍵スケジュール、16ラウンドの暗号化処理、最終置換の4つのステップで構成されています。初期置換では64ビットの平文ブロックのビット位置を入れ替えます。

鍵スケジュールでは56ビットの鍵から各ラウンドで使用する48ビットの部分鍵を生成します。16ラウンドの暗号化処理では部分鍵を用いて平文ブロックを変換していきます。最終置換では初期置換の逆の置換を行い、暗号文ブロックを得ます。

DESの16ラウンドの暗号化処理の詳細

DESの16ラウンドの暗号化処理では平文ブロックを左右32ビットずつに分割し、右側の32ビットに対して一連の処理を施します。この処理では右側の32ビットを48ビットに拡張し、部分鍵との排他的論理和を取ります。

その後、S-boxと呼ばれる置換表を用いて48ビットを32ビットに圧縮し、P-boxと呼ばれる置換を行います。この結果と左側の32ビットとの排他的論理和を取り、左右を入れ替えて次のラウンドに進みます。この一連の処理を16回繰り返すことで、強力な暗号化を実現しているのです。

DESの復号化プロセスと暗号化プロセスの関係性

DESの復号化プロセスは暗号化プロセスの逆の手順で行われます。つまり、最終置換の逆置換、16ラウンドの復号化処理、初期置換の逆置換を経て、元の平文を得ることができます。

興味深いのは復号化処理の各ラウンドで使用する部分鍵が、暗号化処理とは逆順になっている点です。これにより、暗号化処理と同じ鍵を使って復号化処理を行うことができるのです。DESの暗号化と復号化は同じ鍵を使って対称的に行われる点が特徴と言えるでしょう。

DESの安全性と脆弱性

DESの安全性と脆弱性に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • DESの鍵長の問題点と全数探索攻撃
  • DESの脆弱性を突いた攻撃手法の存在
  • DESの安全性向上のための対策と発展

DESの鍵長の問題点と全数探索攻撃

DESの最大の問題点は56ビットという鍵長の短さです。現代の計算機の処理能力の向上により、56ビットの鍵空間を全数探索することが現実的になってきています。全数探索攻撃とは可能性のある全ての鍵を試すことで、正しい鍵を見つけ出す攻撃手法です。

1998年には分散コンピューティングを用いてDESの鍵を全数探索で解読することに成功したという報告もあります。これはDESの安全性が現代の計算機能力に対して十分ではないことを示す出来事でした。鍵長の短さが、DESの安全性における最大の問題点と言えるでしょう。

DESの脆弱性を突いた攻撃手法の存在

DESには差分解読法や線形解読法などの、設計上の脆弱性を突いた攻撃手法が存在します。差分解読法は平文と暗号文のペアから鍵情報を推測する手法です。

線形解読法は平文と暗号文の間の線形関係を利用して鍵を推測する手法です。これらの攻撃手法はDESの設計上の脆弱性を利用しているため、全数探索攻撃よりも効率的に鍵を解読できる可能性があります。DESの安全性は鍵長の短さだけでなく、設計上の脆弱性にも起因していると言えます。

DESの安全性向上のための対策と発展

DESの安全性の問題を受けて、様々な対策が講じられてきました。その一つが、トリプルDESです。トリプルDESはDESを3回続けて適用することで、実効的な鍵長を168ビットに増やした暗号方式です。

また、DESの後継として、AES(Advanced Encryption Standard)が制定されました。AESは128ビット、192ビット、256ビットの鍵長を持ち、DESよりも高い安全性を提供します。DESの安全性の問題は暗号技術の発展を促す原動力となったと言えるでしょう。

DESから学ぶ暗号技術の設計思想

DESから学ぶ暗号技術の設計思想に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • DESの置換と転置の組み合わせによる設計
  • DESのラウンド構造による拡散と混合
  • DESの設計思想が後続の暗号方式に与えた影響

DESの置換と転置の組み合わせによる設計

DESの暗号化処理では置換と転置を組み合わせることで、強力な暗号化を実現しています。置換とはデータの値を別の値に変換する操作であり、転置とはデータの位置を入れ替える操作です。

DESではS-boxによる置換とP-boxによる転置を組み合わせることで、データを複雑に変換しています。この置換と転置の組み合わせは現代の暗号方式でも広く用いられている設計思想です。DESは置換と転置の組み合わせによる暗号化の有効性を示した先駆的な暗号方式と言えます。

DESのラウンド構造による拡散と混合

DESは16ラウンドの暗号化処理を繰り返すことで、データの拡散と混合を実現しています。拡散とは平文の各ビットが暗号文の多くのビットに影響を与えることであり、混合とは鍵の各ビットが暗号文の多くのビットに影響を与えることです。

DESのラウンド構造では各ラウンドの出力が次のラウンドの入力に影響を与えるため、データの拡散が効果的に行われます。また、各ラウンドで異なる部分鍵を使用することで、鍵の混合も実現しています。このようなラウンド構造による拡散と混合は現代の暗号方式の多くに受け継がれている設計思想です。

DESの設計思想が後続の暗号方式に与えた影響

DESの設計思想は後続の暗号方式に大きな影響を与えました。例えば、AESではDESのラウンド構造を発展させたSPN構造が採用されています。SPN構造では置換層と転置層を交互に繰り返すことで、効果的な拡散と混合を実現しています。

また、DESの置換と転置の組み合わせによる設計思想は現代の多くのブロック暗号に受け継がれています。DESの設計思想は暗号技術の発展に大きく貢献したと言えます。DESの設計思想を学ぶことは現代の暗号技術を理解する上でも非常に重要なのです。

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