ISCが3Dプリンターで推進薬タンク製造へ、WAAM技術活用し宇宙輸送システム開発を加速

text: XEXEQ編集部

PR TIMES より

記事の要約

ISCが3Dプリンターで推進薬タンク製造へ
WAAM3D社、クランフィールド大学と業務提携
アジャイル型開発の実現を目指す

ISCの3Dプリンター活用による宇宙輸送システム開発の革新

将来宇宙輸送システム株式会社（ISC）は、3Dプリンターによる推進薬タンクの製造に着手するため、WAAM3D社、クランフィールド大学、愛知産業株式会社と業務提携を締結した。この提携により、ISCは宇宙往還を可能とする輸送システムの実現に向けた開発を加速させる狙いがある。WAAM技術を活用した大型構造物の造形が可能となり、開発効率の飛躍的な向上が期待される。^[1]

ISCは2022年5月に創業したベンチャー企業で、今後5年程度で再使用型の宇宙輸送機を開発するという野心的な目標を掲げている。従来のウォーターフォール型開発ではなく、アジャイル型開発の実現を目指しており、3Dプリンターの活用がその鍵となる。製造期間の短縮により、速やかな製造・試験・修正のサイクルが可能となり、開発速度の向上が見込まれる。

WAAM3D社は、クランフィールド大学からスピンオフしたベンチャー企業で、WAAM装置の自社開発から素材づくりまで一貫したサービスを提供している。同社の技術は宇宙産業以外にも、石油・ガス産業、鉱業など幅広い分野で活用されている。クランフィールド大学は金属AM研究に15年以上の実績を持ち、世界最大規模の金属積層造形施設を有している。

	ISC	WAAM3D社	クランフィールド大学	愛知産業
主な役割	宇宙輸送システム開発	WAAM装置提供	研究知見提供	製造技術開発
特徴	アジャイル型開発	一貫サービス提供	金属AM研究実績	技術商社
目標	再使用型輸送機開発	造形技術の可視化	先進プロセス研究	AMソリューション提供

WAAM技術について

WAAM技術とは、Wire-Arc Additive Manufacturingの略称で、アーク溶接の手法を応用した金属積層造形技術のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。

大型構造物の造形が可能
アーク溶接と多関節ロボットを組み合わせた装置を使用
造形対象のワークサイズに理論上の制限がない

WAAM技術は、従来のアーク溶接機と多関節ロボットをベースとした装置を使用するため、大型の構造物を効率的に造形することができる。この技術の課題として、造形パスの生成、造形条件の微調整、入熱のコントロールがあるが、WAAM3D社はこれらを補助するソフトウェアや各種センサーの開発に成功し、造形技術の可視化やフィードバック制御を可能にした。

3Dプリンターを活用した宇宙輸送システム開発に関する考察

ISCの3Dプリンター活用による宇宙輸送システム開発は、従来の製造方法に比べて大幅な時間短縮と柔軟な設計変更を可能にする可能性がある。しかし、宇宙環境での使用を前提とした場合、3Dプリンターで製造された部品の耐久性や信頼性の検証が課題となるだろう。特に、推進薬タンクのような重要部品については、従来の製造方法との比較検証や長期的な性能評価が不可欠となる。

今後、3Dプリンター技術の進化に伴い、より複雑な形状や機能を持つ部品の製造が可能になることが期待される。例えば、内部構造の最適化による軽量化や、複数の機能を統合した一体成型部品の開発などが考えられる。これにより、宇宙輸送機の性能向上やコスト削減が実現できる可能性がある。同時に、3Dプリンター用の新素材開発も重要となり、宇宙環境に適した特性を持つ材料の研究が進むことも予想される。

ISCのアジャイル型開発アプローチは、宇宙産業全体に大きな影響を与える可能性がある。従来の宇宙開発は長期的かつ高コストなプロジェクトが主流だったが、3Dプリンターを活用した迅速な試作と改良のサイクルにより、開発期間の短縮とコスト削減が実現できるだろう。この手法が成功すれば、他の宇宙関連企業も追随し、業界全体の競争力向上や技術革新の加速につながることが期待される。

参考サイト

^ PR TIMES. 「将来宇宙輸送システム株式会社、金属積層造形（AM）の世界最先端技術を有する企業と連携。推進剤タンクを製造へ | 将来宇宙輸送システム株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000106229.html, (参照 24-07-30).

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