キヤノンMJと大和ハウス工業、物流施設の荷待ち・荷役時間可視化システムを開発、AIとカメラ映像で業務効率化を実現

text: XEXEQ編集部
（記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります）

記事の要約

キヤノンMJと大和ハウス工業が新システム開発
物流施設でのドライバー荷待ち・荷役時間を可視化
DPL平塚で実証実験を2024年11月1日から開始

キヤノンMJと大和ハウス工業の物流効率化システム開発

キヤノンマーケティングジャパン（キヤノンMJ）と大和ハウス工業は2024年9月9日、物流施設におけるトラックドライバーの荷待ち・荷役時間を可視化し改善を支援するシステムの開発を発表した。このシステムは、物流の「2024年問題」に対応するためのソリューションとして位置付けられている。2024年11月1日より、大和ハウス工業のマルチテナント型物流施設「DPL平塚」で実証実験を開始する予定だ。^[1]

新システムは、カメラで撮影した映像からAIを活用してトラックを自動検知し、物流施設への入場から退場までの全プロセスを記録・蓄積する。さらに、キヤノンMJグループ独自の作業解析技術を用いて、ドライバーの行動をAIが分析し、荷待ちや荷役の時間を正確に計測する。これにより、荷主事業者やテナント企業は物流業務の効率化に向けた具体的な改善策を見出すことが可能になる。

大和ハウス工業は、全国で332棟、総延床面積約12,950,000㎡の物流施設を開発してきた実績を持つ。2018年からは「トラックの入場予約システム・オンラインチェックインシステム」を導入し、物流の効率化・自動化を推進してきた。今回のシステム開発は、これらの取り組みをさらに発展させ、物流施設の機能を単なる保管場所から物流業務全体の最適化を支援する拠点へと進化させる狙いがある。

キヤノンMJと大和ハウス工業の物流効率化システムの特徴

	システムの機能	期待される効果	対象施設
主な特徴	AIによるトラック自動検知	荷待ち・荷役時間の短縮	DPL（ディーピーエル）シリーズ
データ収集	カメラ映像からの動作分析	物流業務の効率化	マルチテナント型物流施設
導入予定	2024年11月1日から実証実験	「2024年問題」への対応	DPL平塚で先行実施
既存システム	入場予約・オンラインチェックイン	物流プロセス全体の最適化	全国332棟の物流施設

マルチテナント型物流施設について

マルチテナント型物流施設とは、複数の企業テナントが入居できる物流施設のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。

複数企業の共同利用による効率的な空間活用
各テナントのニーズに合わせた柔軟な区画設計
共有設備の利用によるコスト削減効果

大和ハウス工業が開発した「DPL平塚」はマルチテナント型物流施設の一例であり、今回のシステム導入により、さらなる機能強化が図られる。この施設タイプは、物流の効率化だけでなく、複数企業のリソース共有による相乗効果も期待できる点で注目されている。物流の「2024年問題」に対応するためのプラットフォームとしての役割も担うことになるだろう。

物流効率化システムに関する考察

キヤノンMJと大和ハウス工業が開発した物流効率化システムは、トラックドライバーの労働環境改善と物流業界全体の生産性向上に大きく寄与する可能性を秘めている。特にAIを活用した映像解析技術により、これまで人手に頼っていた荷待ち・荷役時間の計測を自動化し、より精密なデータ収集を実現している点は高く評価できる。しかし、プライバシーの観点から、ドライバーの行動分析に関する倫理的な配慮も必要になるだろう。

今後の課題として、収集したデータの具体的な活用方法や、テナント企業間でのデータ共有の仕組みの構築が挙げられる。また、システムの導入コストや運用負担が中小の物流事業者にとって障壁とならないよう、段階的な導入プランや支援策の検討も重要だ。これらの課題に対しては、業界団体や行政との連携による標準化の推進や、補助金制度の整備などが解決策として考えられる。

将来的には、このシステムを基盤として、AIによる配送ルートの最適化や、自動運転車両との連携など、さらなる技術革新が期待される。物流DXの推進により、トラックドライバーの labor shortage問題の緩和だけでなく、環境負荷の低減や災害時の物流網の強靭化にもつながる可能性がある。キヤノンMJと大和ハウス工業には、この革新的なシステムを軸に、物流業界全体のエコシステムを変革していくリーダーシップが求められるだろう。