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DSRC(Dedicated Short Range Communications)とは?意味をわかりやすく簡単に解説

text: XEXEQ編集部


DSRC(Dedicated Short Range Communications)とは

DSRCとはDedicated Short Range Communicationsの略称で、日本語では専用狭域通信と呼ばれています。これは5.8GHz帯の電波を用いた近距離無線通信システムのことを指します。

DSRCは主に高速道路での自動料金収受システム(ETC)や、安全運転支援システム、道路交通情報の提供などに活用されています。また、車車間通信や路車間通信にも使用され、交通事故の防止や渋滞の緩和などに役立つとされています。

DSRCの通信距離は最大で数百メートルであり、高速移動中の車両でも安定した通信が可能です。また、セキュリティ面でも優れており、通信内容の秘匿性や改ざん防止機能を備えています。

日本では1990年代後半から研究開発が進められ、2001年にETCサービスが開始されました。現在では多くの高速道路で利用されており、利便性の向上や交通事故の減少などに貢献しています。

今後は自動運転車両の普及に伴い、DSRCの重要性がさらに高まると予想されます。車両同士や道路インフラとの通信により、より安全で効率的な交通システムの実現が期待されているのです。

DSRCの通信方式と特徴

DSRCの通信方式と特徴に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • DSRCの通信方式と周波数帯
  • DSRCの通信距離と通信速度
  • DSRCのセキュリティ機能と通信の安定性

DSRCの通信方式と周波数帯

DSRCはASK方式と呼ばれる振幅変調方式を採用しています。この方式は電波の振幅を変化させることでデジタル信号を伝送します。ASK方式は比較的シンプルな構成で実現できるため、低コストでの運用が可能となっています。

また、DSRCは5.8GHz帯の周波数を使用しています。この周波数帯は他の無線システムとの干渉が少なく、高速移動中の車両でも安定した通信が可能です。日本では5770MHz~5850MHzの周波数帯が割り当てられており、広範囲をカバーできるようになっています。

なお、欧州では5.9GHz帯、北米では5.9GHz帯と915MHz帯が使用されており、各国・地域によって割り当てられた周波数帯が異なっています。しかし、基本的な通信方式はASK方式で共通しているため、グローバルな互換性が確保されているのです。

DSRCの通信距離と通信速度

DSRCの通信距離は路側機と車載器の間で最大30メートルです。ただし、アンテナの設置状況や周辺環境によって、通信距離は変動する可能性があります。ETCレーンでは料金所手前から通信を開始し、ゲートを通過するまでの間に必要な情報をやり取りします。

一方、DSRCの通信速度は最大4Mbpsとなっています。これはETCでの利用に十分な速度であり、料金情報や車両情報などを瞬時に伝送できます。また、安全運転支援システムではより大容量のデータ通信が必要となるため、通信速度の高さが重要となってきます。

将来的には通信距離の拡大や通信速度の向上が期待されています。これにより、より広範囲での路車間通信や、大容量データの送受信が可能になると考えられています。ITS(高度道路交通システム)の発展に伴い、DSRCの性能向上が進められているのです。

DSRCのセキュリティ機能と通信の安定性

DSRCは高いセキュリティ性能を有しています。通信内容の暗号化や、電子署名による改ざん防止機能を備えており、不正アクセスや情報漏洩のリスクを低減できます。特に、ETCでは決済情報を扱うため、セキュリティ対策が重要視されています。

また、DSRCは通信の安定性にも優れています。電波の直進性が高く、障害物の影響を受けにくいため、高速移動中の車両でも安定した通信が可能です。天候や周辺環境の影響を受けにくいことも、DSRCの大きな特徴の一つといえるでしょう。

ただし、トンネル内や大型車両の陰などでは電波の受信状況が悪化する可能性があります。そのため、アンテナの設置位置や角度を最適化するなど、通信品質を維持するための工夫が必要とされています。今後はさらなる通信の安定性向上に向けた取り組みが進められると期待されています。

DSRCの主な用途と活用事例

DSRCの主な用途と活用事例に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • ETCシステムでのDSRCの活用
  • 安全運転支援システムへのDSRCの応用
  • ITSスポットサービスとDSRC

ETCシステムでのDSRCの活用

DSRCはETCシステムの中核を担っています。ETCレーンに設置された路側アンテナと、車両に搭載された車載器との間で、DSRCを用いた無線通信が行われます。料金所手前で通信を開始し、ゲートを通過するまでの間に、料金情報や車両情報のやり取りが完了します。

ETCシステムではDSRCの高いセキュリティ性能が活かされています。暗号化された通信により、決済情報の漏洩を防止できます。また、電子署名による改ざん防止機能も備えており、不正な料金徴収を防ぐことができるのです。

DSRCを用いたETCシステムにより、料金所での渋滞緩和や料金収受の効率化が実現しました。今後は多車線料金所(MLFC)への対応など、さらなる高度化が進められる予定です。ETCシステムはDSRCの代表的な活用事例の一つといえるでしょう。

安全運転支援システムへのDSRCの応用

DSRCは安全運転支援システムにも応用されています。路側機から提供される信号情報や渋滞情報を、車載器で受信することで、ドライバーに注意喚起を行います。例えば、信号無視防止システムでは赤信号に近づくと警告音が鳴るようになっています。

また、車車間通信にもDSRCが活用されています。前方の車両から、急ブレーキの情報を受信することで、追突事故の防止に役立てられます。他にも、見通しの悪い交差点での出会い頭事故の防止など、様々な場面での活用が期待されているのです。

今後は自動運転車両の普及に伴い、DSRCを用いた安全運転支援システムの重要性がさらに高まるとみられています。車両同士や道路インフラとの協調により、より高度な事故防止機能の実現が可能になるでしょう。DSRCは交通事故のない安全な社会の実現に向けて、大きな役割を果たすことが期待されています。

ITSスポットサービスとDSRC

DSRCはITSスポットサービスにも活用されています。ITSスポットとは高速道路上に設置された路側機のことを指し、DSRCを用いて様々な情報を提供します。例えば、道路交通情報や安全運転支援情報、観光情報などを、車載器で受信することができます。

また、ITSスポットではDSRCの双方向通信機能を活かした、動的経路案内サービスも提供されています。目的地までの最適ルートを、リアルタイムの交通情報に基づいて案内するもので、渋滞の回避や所要時間の短縮に役立ちます。

今後はITSスポットサービスのさらなる拡充が予定されており、より多様な情報提供が可能になると期待されています。また、民間事業者との連携により、地域に密着した情報の配信なども検討されているようです。DSRCを活用したITSスポットサービスはドライバーの利便性向上や、地域活性化にも寄与するものと期待されています。

DSRCの今後の展望と課題

DSRCの今後の展望と課題に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • 自動運転におけるDSRCの役割
  • V2X通信の発展とDSRC
  • DSRCの国際標準化と相互接続性

自動運転におけるDSRCの役割

DSRCは自動運転システムの実現に向けて、重要な役割を担うと期待されています。自動運転車両では車載センサーやカメラだけでなく、外部との通信が不可欠となります。DSRCを用いることで、車両同士や道路インフラとの情報共有が可能になり、より安全で効率的な走行制御が実現できるのです。

例えば、信号情報や渋滞情報をリアルタイムで受信することで、スムーズな交差点通過や最適ルートの選択が可能になります。また、周辺車両の位置情報や速度情報を共有することで、協調的な車間距離の維持や車線変更が実現できるでしょう。DSRCは自動運転に必要不可欠な通信インフラとして、その重要性がさらに高まっていくと考えられています。

V2X通信の発展とDSRC

V2X通信とはVehicle to Everythingの略で、車両と様々なモノがつながる通信システムのことを指します。具体的には車車間通信(V2V)、路車間通信(V2I)、歩車間通信(V2P)などが含まれます。DSRCはこのV2X通信の中核を担う技術の一つとして位置付けられています。

今後はセルラー通信(5G)との連携により、より広範囲でシームレスなV2X通信の実現が期待されています。DSRCとセルラー通信を組み合わせることで、それぞれの長所を活かしたハイブリッド型の通信システムが構築できるでしょう。また、エッジコンピューティングの活用により、リアルタイム性の高い情報処理も可能になると予想されています。

ただし、V2X通信の発展には通信プロトコルの標準化や、セキュリティ対策の強化など、様々な課題が残されています。また、通信インフラの整備や、車載器の普及促進など、社会全体での取り組みが必要不可欠です。DSRCはV2X通信の発展を支える重要な技術の一つとして、今後もその進化が注目されています。

DSRCの国際標準化と相互接続性

DSRCは国際的な標準化が進められています。国際標準化機構(ISO)や国際電気通信連合(ITU)などの機関で、通信プロトコルやセキュリティ規格の標準化が行われてきました。これにより、各国・地域間でのDSRCシステムの相互接続性が確保されつつあります。

しかし、周波数帯の割り当てや運用ルールなどは国や地域によって異なる部分もあります。特に、日本と欧米では使用周波数帯が異なっているため、互換性の確保が課題となっています。今後はグローバルな相互接続性の実現に向けて、さらなる標準化の取り組みが求められるでしょう。

また、DSRCの普及拡大には車載器のコストダウンも重要な課題の一つです。現状では車載器の価格が比較的高く、普及の妨げになっているとの指摘もあります。技術革新によるコストダウンや、量産効果による価格低減など、様々な方策が必要とされています。

加えて、DSRCの活用シーンの拡大も求められています。現在は主にETCシステムや安全運転支援システムでの利用が中心ですが、今後は物流や決済など、より広範な分野での活用が期待されているのです。DSRCの潜在能力を最大限に引き出すためにも、新たな用途開拓に向けた取り組みが不可欠といえるでしょう。

DSRCは次世代の交通インフラを支える重要な技術の一つです。国際標準化や相互接続性の確保、コストダウンや新たな活用シーンの開拓など、様々な課題に取り組みながら、その発展が期待されています。DSRCの進化が、より安全で効率的な交通社会の実現につながることを期待したいですね。

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