賃金のデジタル払い、約9割の企業が導入予定なしと回答、業務負担増加やセキュリティリスクが主な理由に

text: XEXEQ編集部
（記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります）

PR TIMES より

記事の要約

企業の約9割が賃金のデジタル払い導入予定なし
導入に前向きな理由は振込手数料削減が最多
導入予定がない理由は業務負担増加が最多

賃金のデジタル払い、企業の約9割が導入に消極的な姿勢

帝国データバンクは、企業における賃金のデジタル払いへの対応に関するアンケート調査を実施し、その結果を2024年10月16日に公開した。調査によると、賃金のデジタル払いについて「導入予定はない」と回答した企業は88.8％に達し、「導入に前向き」な企業はわずか3.9％にとどまっている。^[1]

導入に前向きな理由としては、「振込手数料の削減」が53.8％でトップとなり、次いで「従業員の満足度向上」が42.3％、「事務手続きの削減」が32.7％と続いた。一方、導入予定がない理由としては、「業務負担の増加」が61.8％で最も多く、「制度やサービスに対する理解が十分でない」が45.0％、「セキュリティ上のリスクを懸念」が43.3％と続いている。

企業からは、「必要性を感じない」や「社会への浸透具合、社員からの要望、セキュリティ対策など多面的な検討が必要」といった導入に消極的な声が多数を占めた。一方で、「導入を検討している。周知されれば便利だと思う」といった前向きなコメントも一部聞かれた。今後、賃金のデジタル払いの普及に向けては、制度やサービスに関する情報周知やセキュリティ強化などの課題解決が求められる。

賃金のデジタル払いに関する企業の意識調査結果

	導入に前向き	導入予定なし
割合	3.9％	88.8％
主な理由1	振込手数料の削減（53.8％）	業務負担の増加（61.8％）
主な理由2	従業員の満足度向上（42.3％）	制度やサービスに対する理解不足（45.0％）
主な理由3	事務手続きの削減（32.7％）	セキュリティ上のリスク懸念（43.3％）

デジタルマネーについて

デジタルマネーとは、電子的に記録・保存された金銭的価値を指し、主に以下のような特徴を持つ。

物理的な現金を必要とせず、電子的に取引可能
スマートフォンなどのデバイスを通じて利用可能
取引の即時性と利便性が高い

賃金のデジタル払いでは、従来の銀行振込に代わり、このデジタルマネーを用いて給与の一部を支払うことが可能となる。2024年8月には初めてPayPayの運営会社が厚生労働省から取り扱い事業者として指定を受け、同年9月にはソフトバンクグループ各社が国内で初めて希望する社員に対し給与をPayPayで支払うなど、実用化に向けた動きが始まっている。

賃金のデジタル払いに関する考察

賃金のデジタル払いの導入は、振込手数料の削減や従業員の満足度向上など、企業にとっていくつかのメリットがある。しかし、現状では大多数の企業が導入に消極的な姿勢を示しており、業務負担の増加やセキュリティリスクへの懸念が主な障壁となっている。これらの課題を解決するためには、制度やサービスに関する詳細な情報提供と、セキュリティ対策の強化が不可欠だろう。

今後、賃金のデジタル払いが普及するためには、企業側の負担を軽減する仕組みづくりが重要となる。例えば、既存の給与システムとの連携を容易にするためのAPI開発や、セキュリティ監査の簡素化などが考えられる。また、従業員の理解と受容を促すための教育プログラムの提供も、スムーズな導入につながる可能性がある。

長期的には、賃金のデジタル払いが労働市場や金融サービスに与える影響も注目される。給与の即時払いや細分化された支払いなど、新たな給与体系の可能性が広がる一方で、個人の金銭管理や消費行動にも変化をもたらす可能性がある。企業、従業員、そして社会全体にとってのメリットとデメリットを慎重に見極めながら、制度設計を進めていく必要があるだろう。

参考サイト

^ PR TIMES. 「賃金のデジタル払い、約9割が「導入予定なし」業務負担増やセキュリティリスクへの不安が理由 | 株式会社帝国データバンクのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000951.000043465.html, (参照 24-10-18).
厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/index.html

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