マイクロ波給電技術を適用したデジタルピッキングシステム、アイオイシステムと東芝インフラシステムズが共同開発し物流効率化を実現

text: XEXEQ編集部

PR TIMES より

記事の要約

マイクロ波給電技術を適用したデジタルピッキングシステムを開発
表示器の電池切れによるダウンタイムを解消
物流現場の効率化と省力化を実現

アイオイシステムと東芝インフラシステムズの共同開発によるデジタルピッキングシステム

株式会社アイオイ・システムと東芝インフラシステムズ株式会社は、業界初となるマイクロ波給電技術を適用したデジタルピッキングシステムの開発に成功した。両社は2024年8月8日に発表を行い、「国際物流総合展2024」でデモシステムを初公開する予定だ。この革新的なシステムは、物流倉庫における作業効率の向上と省力化を実現する画期的な技術となる可能性が高い。^[1]

新しく開発されたシステムの最大の特徴は、マイクロ波給電技術の活用だ。この技術により、デジタルピッキングシステムの表示器に無線で電力を供給することが可能となった。従来の表示器では電池切れによるダウンタイムや電池交換の手間が課題となっていたが、この問題を解決し、24時間稼働する物流倉庫での運用効率を大幅に向上させている。

両社の共同開発により、アイオイシステムはマイクロ波給電の受電機能を搭載した表示器を製作し、東芝インフラシステムズは高利得アンテナをメカニカルに制御する給電装置を開発した。このシステムは、東芝インフラシステムズの独自技術により電池残量の把握が可能で、最適給電アルゴリズムの適用により複数の表示器を効率よく給電することができる。2023年8月には実証実験も成功裏に終了している。

マイクロ波給電技術を適用したデジタルピッキングシステムの特徴まとめ

	技術的特徴	運用上の利点	将来的な展望
主要機能	マイクロ波による無線給電	ダウンタイムの削減	物流現場のさらなる効率化
適用技術	5.7GHz帯の利用	電池交換作業の不要化	レイアウトフリー化の実現
システム構成	受電機能搭載表示器	メンテナンス時間の大幅削減	他産業への技術応用
制御方式	最適給電アルゴリズム	複数表示器への効率的給電	IoTデバイスへの展開
実証状況	35台での給電実証成功	24時間稼働への対応	新たな電力供給方式の確立

マイクロ波給電について

マイクロ波給電とは、マイクロ波という電波を用いて長距離に電気を送るワイヤレス電力伝送を行う技術のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。

数メートル離れた多数のデバイスに無線で給電が可能
920MHz、2.4GHz、5.7GHzなどの高周波数帯を利用
電流を電磁波に変換し、受電側で直流電流に再変換する仕組み

マイクロ波給電技術は、従来の有線給電や近接型のワイヤレス充電と比較して、より広範囲かつ柔軟な電力供給を実現する。特に産業用IoTデバイスや、センサーネットワークなどの分野での活用が期待されている。この技術により、電池交換やケーブル配線の手間を大幅に削減し、メンテナンスコストの低減と運用効率の向上を同時に達成することが可能となる。

マイクロ波給電技術を適用したデジタルピッキングシステムに関する考察

マイクロ波給電技術を適用したデジタルピッキングシステムの登場は、物流業界に大きな変革をもたらす可能性が高い。従来のシステムでは避けられなかった電池交換作業やそれに伴うダウンタイムが解消されることで、24時間稼働の物流倉庫における作業効率が飛躍的に向上すると予想される。さらに、この技術の応用範囲は物流業界にとどまらず、工場や商業施設、医療機関など幅広い分野での活用が期待できるだろう。

一方で、マイクロ波給電技術の普及に伴い、新たな課題も浮上する可能性がある。例えば、マイクロ波の人体への影響や他の電子機器との電磁干渉などの安全性に関する懸念が挙げられる。また、大規模な導入に伴う初期コストの問題や、既存システムからの移行に関する課題も考えられる。これらの課題に対しては、継続的な技術改良と安全基準の策定、さらには導入支援策の充実が求められるだろう。

今後、マイクロ波給電技術の進化とともに、より高効率で柔軟性の高いシステムが開発されることが期待される。例えば、AIを活用した最適な給電制御や、より広範囲をカバーできる給電システムの開発などが考えられる。また、この技術を基盤として、完全自動化された次世代の物流システムが構築される可能性も高い。産学官の連携を通じて、技術的課題の解決と社会実装の加速が進むことで、「電力＝無線」という新たな時代の幕開けとなるかもしれない。