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DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)とは?意味をわかりやすく簡単に解説

text: XEXEQ編集部


DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)とは

DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)とは光ファイバー通信において複数の光信号を異なる波長で多重化する技術です。この技術により、1本の光ファイバーで大容量のデータ伝送を実現することができます。

DWDMでは狭い間隔で異なる波長の光信号を多重化するため、波長間の干渉を避ける必要があります。そのため、高精度な光源と光フィルターが使用され、安定した光信号の伝送が可能となっています。

DWDMは長距離通信や大容量通信に適しており、基幹ネットワークや海底ケーブルなどで広く利用されています。また、既存の光ファイバーインフラを有効活用できるため、コスト面でも優れたソリューションとなっています。

DWDMの登場により、光ファイバー1本あたりの伝送容量は飛躍的に増大しました。現在では数十~数百チャネルの多重化が可能となり、テラビット級の大容量伝送を実現しています。

DWDMは今後も通信トラフィックの増加に対応するための重要な技術として、さらなる高度化が期待されています。次世代の光通信システムにおいても、DWDMは欠かせない役割を担うことでしょう。

DWDMの原理と仕組み

DWDMの原理と仕組みに関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • 光信号の多重化と分離
  • 波長間隔と光スペクトル利用効率
  • 光増幅器とネットワークの長距離化

光信号の多重化と分離

DWDMでは異なる波長の光信号を1本の光ファイバーに多重化して伝送します。送信側では複数の光送信機からそれぞれ異なる波長の光信号が出力され、光多重化器によって1本の光ファイバーに多重化されます。

受信側では光分離器によって多重化された光信号が波長ごとに分離され、それぞれの光受信機で電気信号に変換されます。この一連の過程により、複数の光信号を同時に伝送することが可能となります。

光信号の多重化と分離には高精度な光部品が使用されます。光多重化器と光分離器にはアレイ導波路回折格子(AWG)などの波長選択性の高い光デバイスが用いられ、安定した動作が実現されています。

波長間隔と光スペクトル利用効率

DWDMでは光信号の波長間隔を狭くすることで、光ファイバーの周波数帯域を効率的に利用します。ITU-Tにより標準化された波長グリッドでは100GHz間隔(0.8nm)や50GHz間隔(0.4nm)などが規定されています。

狭い波長間隔を実現するためには高精度な光源と光フィルターが必要です。DFB(分布帰還型)レーザーや外部共振器型レーザーなどの狭線幅光源が使用され、光信号のスペクトル幅を抑えることができます。

さらに、光信号のスペクトル形状を最適化することで、隣接チャネル間の干渉を最小限に抑えつつ、高いスペクトル利用効率を達成することができます。先進的な変調方式や信号処理技術の適用により、さらなる大容量化が可能となっています。

光増幅器とネットワークの長距離化

DWDMシステムでは光信号の長距離伝送を実現するために、光増幅器が使用されます。エルビウム添加光ファイバー増幅器(EDFA)は1550nm帯の光信号を効率的に増幅することができ、DWDMネットワークの長距離化に大きく貢献しています。

EDFAは複数の波長の光信号を同時に増幅できるため、DWDMシステムに最適です。また、光増幅器を利用することで、中継器間の距離を延ばすことができ、ネットワークの設計自由度が向上します。

光増幅器の性能向上とともに、光ファイバーの低損失化も進展しています。シングルモード光ファイバーの損失は0.2dB/km以下にまで低減されており、長距離伝送におけるSignal-to-Noise比(SNR)の確保に貢献しています。

DWDMの適用分野と利用事例

DWDMの適用分野と利用事例に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • 基幹ネットワークにおけるDWDMの活用
  • 海底ケーブルシステムへのDWDMの適用
  • データセンター間接続でのDWDM利用

基幹ネットワークにおけるDWDMの活用

DWDMは通信事業者の基幹ネットワークにおいて広く利用されています。都市間や国間を結ぶ大容量の通信回線ではDWDMによる光信号の多重化が不可欠です。

基幹ネットワークでは数十~数百Gbpsの高速信号を多数の波長に載せて伝送します。DWDMを用いることで、既存の光ファイバーインフラを最大限に活用しつつ、通信容量の拡張が可能となります。

また、DWDMはネットワークの信頼性向上にも貢献します。保護切り替え機能を備えたDWDMシステムでは障害発生時に迅速な経路切り替えが可能であり、通信サービスの連続性を確保することができます。

海底ケーブルシステムへのDWDMの適用

DWDMは大陸間を結ぶ海底ケーブルシステムにおいても重要な役割を果たしています。海底ケーブルは数千kmに及ぶ超長距離伝送を実現する必要があり、光信号の減衰が大きな課題となります。

DWDMを用いることで、複数の波長を同時に伝送し、1本の海底ケーブルで大容量の通信を実現することができます。また、光増幅器を適切に配置することで、長距離伝送におけるSNRを確保し、高品質な通信を実現しています。

最新の海底ケーブルシステムでは1本のファイバーペアで数十Tbpsもの大容量伝送が可能となっています。DWDMの高度化とともに、海底ケーブルの伝送容量は今後さらに拡大していくことが期待されています。

データセンター間接続でのDWDM利用

クラウドサービスの普及に伴い、データセンター間の高速・大容量接続のニーズが高まっています。DWDMはデータセンター間を結ぶ光ネットワークにおいても重要な役割を果たしています。

データセンター間接続では低遅延かつ高帯域な通信が求められます。DWDMを用いることで、複数の波長を多重化し、数十~数百Gbpsの高速接続を実現することができます。

また、DWDMはデータセンター間の距離に応じて柔軟にネットワークを設計できる利点があります。短距離から長距離まで、様々な接続要件に対応することができ、データセンターの立地自由度を高めることができます。

DWDMの将来展望と技術動向

DWDMの将来展望と技術動向に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • 次世代DWDMシステムの大容量化
  • コヒーレント光通信技術の進展
  • 光ネットワークの柔軟性と自動化

次世代DWDMシステムの大容量化

通信トラフィックの増加に伴い、DWDMシステムのさらなる大容量化が求められています。次世代のDWDMシステムではチャネル当たりの伝送速度の向上と、波長多重数の増加が進められています。

現在、400Gbpsや800Gbpsのチャネル速度を実現するシステムが開発されており、将来的には1Tbps以上のチャネル速度も視野に入っています。また、波長多重数についても、数百波長を超えるシステムの実現が期待されています。

大容量化を実現するためには高度な変調方式や誤り訂正技術の適用が不可欠です。多値変調方式や偏波多重、高度な誤り訂正符号の採用により、限られた周波数帯域を効率的に利用することができます。

コヒーレント光通信技術の進展

コヒーレント光通信技術はDWDMシステムの大容量化と長距離化を支える重要な技術です。コヒーレント検波を用いることで、光信号の振幅と位相の両方を利用した高度な変調方式を適用することができます。

デジタルシグナルプロセッシング(DSP)技術の進歩により、コヒーレント光通信システムの性能は飛躍的に向上しています。高度な信号処理アルゴリズムを適用することで、光ファイバーの伝送特性を補償し、高品質な信号伝送を実現することができます。

コヒーレント光通信技術は100Gbps以上の高速信号の長距離伝送を可能にしており、今後もDWDMシステムの中核を担う技術として発展していくことが期待されています。

光ネットワークの柔軟性と自動化

DWDMシステムの発展に伴い、光ネットワークの柔軟性と自動化も重要な課題となっています。Software-Defined Networking(SDN)の概念を光ネットワークに適用することで、ネットワークの制御を自動化し、運用コストを削減することができます。

また、光ネットワークの仮想化技術の進展により、物理的なインフラを抽象化し、柔軟なサービス提供が可能となっています。ネットワークスライシングやオンデマンドな波長割り当てなどの機能により、ユーザーの要求に応じた動的なネットワーク構成が実現できます。

さらに、AIやマシンラーニングの技術を活用することで、光ネットワークの運用・管理の自動化が進むことが予想されています。障害予測や性能最適化などに機械学習を適用することで、ネットワークの信頼性と効率性を向上させることができるでしょう。

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