九州大学と双日が赤潮予測アプリの実証実験を開始、養殖業の被害軽減に向けデジタルツイン技術を活用

text: XEXEQ編集部
（記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります）

PR TIMES より

記事の要約

九州大学と双日が赤潮予測アプリの実証実験を開始
伊万里湾で有害赤潮の挙動予測を地図上に表示
養殖業の安定運用と被害軽減を目指す取り組み

赤潮予測アプリの実証実験が伊万里湾で開始

国立大学法人九州大学と双日株式会社は、養殖業に甚大な被害をもたらす有害赤潮の挙動を予測するための共同研究契約を締結した。この取り組みの一環として、長崎県および佐賀県にまたがる伊万里湾における有害赤潮の発生と挙動予測を地図上に表示する赤潮予測アプリケーションを開発し、2024年10月7日より地元の養殖業関係者に提供する実証実験を開始した。^[1]

赤潮予測アプリは、九州大学大学院総合理工学研究院の山口創一助教が開発したシミュレーションモデルUCHI（Unstructured-mesh Coastal model with High-resolution Information）をベースにしている。このモデルは、複雑な陸・海底地形、淡水流入・気象変動の影響を強く受ける内湾・沿岸域環境を、デジタルツインとして仮想空間上に高解像度・高精度に再現することが可能だ。

双日は2008年に双日ツナファーム鷹島を設立し、伊万里湾口の鷹島で約4万尾の本マグロを肥育している。近年、赤潮により数百尾を失う被害も発生していることから、デジタル技術を用いた被害軽減に取り組むこととし、赤潮の移動経路の予測を地図上で表示するアプリケーションを開発した。開発の初期段階から養殖業関係者向けの説明会を複数回開催し、ユーザー視点の意見を反映させている。

赤潮予測アプリの特徴まとめ

	技術基盤	予測範囲	データ活用	提供形態
主な特徴	UCHIモデル	1週間先まで	複合的なデータ統合	地図上での可視化
利点	高解像度・高精度な再現	事前対策の実施可能	精度の高い予測	直感的な理解が可能
対象エリア	内湾・沿岸域	伊万里湾	長崎県・佐賀県	養殖業関係者向け

デジタルツインについて

デジタルツインとは、現実世界から集めたデータをもとに仮想空間上に双子のようなデジタル空間を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術のことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。

現実世界のデータを基にした高精度な仮想モデルの構築
リアルタイムデータの統合による動的なシミュレーション
複雑なシステムの挙動予測や最適化が可能

赤潮予測アプリケーションにおけるデジタルツインの活用は、内湾・沿岸域の複雑な環境を高精度に再現することで、より正確な赤潮の挙動予測を可能にしている。これにより、養殖業者は事前に効果的な対策を講じることができ、赤潮による被害の軽減が期待される。デジタルツイン技術は、赤潮予測以外にも様々な分野での応用が進んでおり、今後さらなる発展が見込まれる。

赤潮予測アプリに関する考察

赤潮予測アプリの開発は、養殖業における重大な課題解決に向けた画期的な取り組みだ。特に、デジタルツイン技術を活用した高精度な予測モデルの構築は、これまでの赤潮対策に新たな可能性をもたらす。しかし、予測精度の維持向上には継続的なデータ収集と分析が不可欠であり、長期的な運用体制の確立が今後の課題となるだろう。

また、このアプリケーションの有効性を最大限に引き出すためには、養殖業者の積極的な活用と適切な対策実施が鍵となる。そのため、アプリの使用方法や予測情報の解釈に関する継続的な教育支援が重要になるだろう。さらに、赤潮対策技術の進歩に合わせてアプリケーションを随時アップデートし、より効果的な被害軽減策を提案できるよう機能拡張を図ることも求められる。

今後は、この取り組みを他の沿岸地域にも展開し、日本全体の養殖業の安定化に貢献することが期待される。さらに、赤潮予測に留まらず、海洋環境全般のモニタリングや水産資源管理など、より包括的な海洋デジタルツインの構築へと発展させることで、持続可能な水産業の実現に向けた大きな一歩となる可能性を秘めている。

参考サイト

^ PR TIMES. 「内湾・沿岸域の海況を高度に再現する技術を初めて活用した赤潮予測アプリの実証を伊万里湾にて開始 | 双日株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000272.000073843.html, (参照 24-10-08).

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