公開:

EMC(Electromagnetic Compatibility)とは?意味をわかりやすく簡単に解説

text: XEXEQ編集部


EMC(Electromagnetic Compatibility)とは

EMC(Electromagnetic Compatibility)は、電子機器が電磁環境下で正常に動作し、他の機器に対して許容できないレベルの電磁妨害を与えないことを指します。つまり、電子機器が電磁的に両立性を有している状態を意味するのです。

EMCを満たすためには、電子機器から発生する電磁ノイズを規定値以下に抑え、外部からの電磁ノイズに対しても誤動作しないようにする必要があります。この電磁ノイズには、伝導ノイズと放射ノイズの2種類が存在します。

伝導ノイズは、電源線や信号線などを介して伝わるノイズのことで、放射ノイズは、空間を伝わる電磁波によるノイズを指すのです。これらのノイズは、他の機器に影響を与えたり、自身の機器が誤動作したりする原因となります。

EMCを確保するためには、設計段階から対策を講じる必要があるでしょう。具体的には、適切なシールドやフィルタの使用、回路設計の工夫、適切な配線やレイアウトなどが挙げられます。

また、EMCに関する規格や法規制も存在するため、それらを満たすことも重要な要素となるでしょう。代表的なものとしては、CISPR規格やFCC規格などがあります。

EMC(Electromagnetic Compatibility)対策の重要性

EMC(Electromagnetic Compatibility)対策に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • EMC(Electromagnetic Compatibility)対策による機器の信頼性向上
  • EMC(Electromagnetic Compatibility)対策と法規制の関係性
  • EMC(Electromagnetic Compatibility)対策におけるシールドの役割

EMC(Electromagnetic Compatibility)対策による機器の信頼性向上

EMC対策を適切に行うことで、電子機器の信頼性を大幅に向上させることができます。電磁ノイズによる誤動作や故障を防ぐことで、機器の安定した動作を確保できるのです。

特に、医療機器や航空機器などの高い信頼性が求められる分野では、EMC対策は非常に重要な要素となります。これらの分野では、機器の誤動作が人命に関わる可能性があるため、厳格なEMC規格が設けられているのです。

また、一般的な電子機器においても、EMC対策は製品の品質を左右する重要な要素の一つでしょう。EMC対策を適切に行うことで、顧客満足度の高い製品を提供することができます。

EMC(Electromagnetic Compatibility)対策と法規制の関係性

多くの国や地域では、EMCに関する法規制が存在します。これらの法規制は、電磁環境の保護や電波の有効利用を目的としており、電子機器はこれらの規制に適合する必要があるのです。

代表的なEMC関連の法規制としては、欧州のEMC指令や米国のFCC規則などが挙げられます。これらの規制では、電子機器から発生する電磁ノイズの限度値や試験方法などが定められています。

法規制に適合しない電子機器は、市場に出荷することができません。そのため、EMC対策は製品開発において必須の要素となっているのです。適切なEMC対策を行うことで、スムーズな製品の上市が可能となります。

EMC(Electromagnetic Compatibility)対策におけるシールドの役割

EMC対策において、シールドは非常に重要な役割を果たします。シールドとは、電磁波を遮蔽する材料や構造のことを指すのです。適切なシールドを使用することで、電磁ノイズの放射や侵入を効果的に抑制できます。

シールドには、導電性の高い金属材料が用いられることが多いでしょう。代表的なものとしては、銅や亜鉛めっきした鋼板などがあります。また、導電性プラスチックや導電性塗料なども利用されるのです。

シールドを効果的に機能させるためには、適切な設計が必要不可欠です。シールドの材質や厚さ、接続方法などを最適化することで、高いシールド効果を得ることができます。EMC対策においては、シールド設計が重要な要素の一つとなっているのです。

EMC(Electromagnetic Compatibility)試験の種類と方法

EMC(Electromagnetic Compatibility)試験に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • 放射エミッション試験の概要と測定方法
  • 伝導エミッション試験の概要と測定方法
  • イミュニティ試験の種類と試験方法

放射エミッション試験の概要と測定方法

放射エミッション試験は、電子機器から放射される電磁ノイズを測定する試験です。この試験では、アンテナを用いて電磁波を受信し、その強度を測定します。

試験は、電波暗室と呼ばれる特殊な部屋で行われることが多いでしょう。電波暗室は、外部からの電磁波の影響を遮断し、正確な測定を可能にする設備です。測定には、スペクトラムアナライザやEMIレシーバなどの専用の測定器が用いられます。

放射エミッション試験では、規定の周波数範囲において、電磁ノイズの強度が規格の限度値を超えないことを確認します。試験結果が規格に適合しない場合は、設計の見直しや追加の対策が必要となるのです。

伝導エミッション試験の概要と測定方法

伝導エミッション試験は、電子機器から電源線や信号線に伝導される電磁ノイズを測定する試験です。この試験では、LISNと呼ばれる擬似電源回路網を用いて、伝導ノイズを測定します。

LISNは、電源線に挿入され、電子機器から発生する伝導ノイズを分離・測定するための回路です。LISNを介して、伝導ノイズはスペクトラムアナライザやEMIレシーバで測定されます。

伝導エミッション試験でも、規定の周波数範囲において、伝導ノイズの強度が規格の限度値を超えないことを確認するのです。限度値を超える伝導ノイズが検出された場合は、ノイズフィルタの追加やグランドの最適化などの対策が必要となります。

イミュニティ試験の種類と試験方法

イミュニティ試験は、電子機器が外部からの電磁ノイズに対して誤動作しないことを確認する試験です。この試験では、意図的に電磁ノイズを印加し、機器の動作を観察します。

代表的なイミュニティ試験としては、放射イミュニティ試験と伝導イミュニティ試験があるでしょう。放射イミュニティ試験では、アンテナから電磁波を照射し、機器の誤動作の有無を確認します。一方、伝導イミュニティ試験では、電源線や信号線に電磁ノイズを印加するのです。

イミュニティ試験では、規定のノイズレベルにおいて、機器が誤動作しないことを確認します。試験中に誤動作が発生した場合は、回路設計の見直しや追加のフィルタの導入などの対策が必要となります。適切なイミュニティ対策を行うことで、電磁環境下での機器の安定動作を確保できるのです。

EMC(Electromagnetic Compatibility)設計のポイント

EMC(Electromagnetic Compatibility)設計に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

  • グランドの設計とノイズ対策の関係性
  • 適切なフィルタ選定とその効果
  • プリント基板のレイアウト設計とEMC(Electromagnetic Compatibility)の関係性

グランドの設計とノイズ対策の関係性

EMC設計において、グランドの設計は非常に重要な要素の一つです。適切なグランド設計を行うことで、電磁ノイズの抑制に大きな効果が期待できます。

グランドは、回路の基準電位を提供するだけでなく、ノイズの帰還経路としても機能するのです。ノイズ電流が適切なグランドを流れることで、ノイズの放射や伝導を抑えることができます。そのため、グランドのインピーダンスを低く保つことが重要となります。

具体的には、グランドプレーンの使用やマルチポイントグランディングなどの手法が有効でしょう。また、グランドの分割や接続方法にも注意が必要です。適切なグランド設計により、EMC性能の向上が期待できるのです。

適切なフィルタ選定とその効果

EMCにおいて、フィルタは電磁ノイズを低減するための重要なコンポーネントです。適切なフィルタを選定し、適切な位置に配置することで、大きなノイズ低減効果が得られます。

フィルタには、コモンモードフィルタとノーマルモードフィルタの2種類があるでしょう。コモンモードフィルタは、線間の同相ノイズを除去し、ノーマルモードフィルタは、線間の差動ノイズを除去します。ノイズの種類に応じて、適切なフィルタを選定する必要があるのです。

また、フィルタの選定では、カットオフ周波数や減衰特性などの特性に注目します。ノイズ周波数に適したカットオフ周波数を持ち、十分な減衰量を確保できるフィルタを選ぶことが重要となります。フィルタの適切な選定と配置により、EMC性能の大幅な向上が見込めるでしょう。

プリント基板のレイアウト設計とEMC(Electromagnetic Compatibility)の関係性

プリント基板のレイアウト設計は、EMC性能に大きな影響を与える要素の一つです。適切なレイアウト設計を行うことで、電磁ノイズの発生や伝搬を抑制できます。

レイアウト設計では、信号線の引き回しや配線間隔、グランドの配置などに注意が必要でしょう。高周波ノイズの発生を抑えるため、信号線の長さを最小限に抑え、適切な配線間隔を確保することが重要です。また、グランドを適切に配置し、ノイズの帰還経路を確保することも必要となります。

さらに、部品の配置やデカップリングコンデンサの使用にも注意が必要です。ノイズ源となる部品とノイズに敏感な部品は、可能な限り離して配置するのです。また、電源ラインにデカップリングコンデンサを適切に配置することで、高周波ノイズの低減が期待できます。適切なレイアウト設計により、EMC性能の高いプリント基板を実現できるでしょう。

「セキュリティ」に関するコラム一覧「セキュリティ」に関するニュース一覧
ブログに戻る

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。