中野サンプラザの3Dデータを公開、文化財のデジタルアーカイブ化を実現

text: XEXEQ編集部

記事の要約

中野サンプラザの3Dデータを公開
外観と内部の3Dモデル化を実施
オープンデータとして商用利用も可能
Webビューアで建物内部の閲覧が可能

中野サンプラザの3Dデータ公開、文化財としてのアーカイブ化を実現

2023年7月に閉館した中野サンプラザの3Dデータが公開された。この取り組みは、長年愛されてきた建物を文化財としてアーカイブ化することを目的としている。外観と建物内部を精密に計測し、3Dモデル化を行うことで、中野のランドマークとしての姿を永久に残すことが可能になった。^[1]

公開されたデータには、3D点群データや3Dモデル、さらには計測時に撮影された写真も含まれている。これらのデータは、東京都オープンデータカタログサイトからダウンロードすることができ、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0国際（CC-BY4.0）のもとで提供されている。このライセンスにより、営利目的を含む自由な利用が可能となっている。

3Dデータの公開に加え、Webビューアも用意されており、建物内部の360度ビューやドールハウスビューを閲覧することができる。このビューアは2027年3月27日までアクセス可能で、パスワード「nakano」を入力することで誰でも閲覧できる仕組みになっている。これにより、閉館後も多くの人々が中野サンプラザの内部を体験することができるようになった。

3Dデータの計測には、様々な最新技術が駆使されている。外観の計測にはCityMapper-2やHovermap ST-Xなどの航空測量センサやハンドヘルドレーザスキャナが使用され、建物内部の計測にはFocus S350やZEB-HORIZONなどの地上レーザスキャナが活用された。さらに、iPhone 12PROMaxに搭載されたLiDARセンサを利用したソフトウェアも使用されており、高精度な3Dデータの取得が実現されている。

	外観計測	内部計測
使用機材1	CityMapper-2	Focus S350
使用機材2	Hovermap ST-X	ZEB-HORIZON
使用機材3	iPhone 12PROMax	Hovermap ST-X
使用機材4	-	iPhone 12PROMax

3Dデータとは

3Dデータとは、三次元の立体物をデジタル上で表現するためのデータ形式のことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。

x、y、zの三次元座標情報を持つ
物体の形状や表面の質感を再現可能
様々なソフトウェアで編集や加工が可能
VRやARなどの技術と組み合わせて活用できる
建築や製造業、エンターテインメントなど幅広い分野で利用される

3Dデータは、点群データやポリゴンメッシュなど様々な形式で表現される。点群データは物体の表面を多数の点で表現するもので、レーザースキャナーなどで取得されることが多い。一方、ポリゴンメッシュは三角形や四角形などの面の集合体で物体を表現する。これらのデータ形式は用途に応じて使い分けられ、3D印刷やCG制作、シミュレーションなど多岐にわたる分野で活用されている。

中野サンプラザの3Dデータ公開に関する考察

中野サンプラザの3Dデータ公開は、文化財のデジタル保存という観点から非常に意義深い取り組みだ。今後、他の歴史的建造物や文化財においても同様の取り組みが広がる可能性がある。ただし、データの長期保存や更新、セキュリティの確保などの課題も予想されるため、これらに対する適切な対策が必要となるだろう。

公開された3Dデータの活用方法としては、VR空間でのバーチャルツアーやコンサートの開催、建築学習教材としての利用、さらには中野サンプラザをモチーフにした新たなデジタルアート作品の制作なども期待できる。今後は、こうしたデータを活用したクリエイティブな取り組みを支援する仕組みづくりや、データ利用者と地域をつなぐプラットフォームの構築なども検討の余地があるだろう。

中野サンプラザの3Dデータ公開は、建築や都市計画の専門家、デジタルアーティスト、そして中野サンプラザに思い入れのある一般市民など、幅広い層に恩恵をもたらす取り組みだ。一方で、実際の建物が取り壊されることへの寂しさを感じる人々もいるかもしれない。デジタルアーカイブが実物の代替となり得るのか、文化財保護の在り方について新たな議論を呼ぶ可能性もあるだろう。