フリーランス保護新法に関するIT人材の認知度調査、約2割が概要を理解し就業環境の改善に期待

text: XEXEQ編集部
（記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります）

PR TIMES より

記事の要約

フリーランス保護新法の概要を知るITフリーランスは約2割
約4人に1人のITフリーランスが口頭契約による認識齟齬を経験
フリーランスになる主な理由はスキルに見合った報酬の提示

フリーランス保護新法に関するIT人材の認知度と実態調査結果

レバテック株式会社は、2024年11月に施行されるフリーランス保護新法に関して、IT人材563名を対象とした意識・実態調査を実施した。調査結果によると、現在フリーランスとして働くIT人材のうち約20%が新法の内容を熟知または概要を理解していることが明らかになった。一方、正社員として働くIT人材の理解度は約18%にとどまっている。^[1]

ITフリーランスが取引先との契約で経験した事例では、口頭契約による認識の齟齬が24.8%と最多となった。報酬の支払い遅延や未払い（18.8%）、一方的な報酬の減額（14.9%）など、金銭面におけるトラブルも多く報告されている。フリーランスとして働く上での悩みや不安では、継続的な案件獲得が47.5%と最も高い割合を示した。

フリーランスを選択した主な理由としては、スキルや経験に見合った報酬の獲得が22.7%で1位となった。また、家庭の事情によりフルタイムでの就業が困難であることを理由に挙げた回答者も約11%存在する。2024年の春闘賃上げ率が33年ぶりに5%を超える中、IT業界特有の多重下請け構造により賃金上昇が困難な状況も、フリーランス選択の背景にあると考えられる。

フリーランス保護新法に関する調査結果まとめ

	ITフリーランス	正社員IT人材
新法の概要理解度	約20%	約18%
新法による影響予想	約50%が継続しやすくなると予想	約60%が挑戦しやすくなると回答
主な契約トラブル	口頭契約による認識齟齬（24.8%）	-
主な悩み	継続的な案件獲得（47.5%）	-
フリーランス選択理由	スキルに見合った報酬（22.7%）	-

多重下請けについて

多重下請けとは、元請け企業から順に複数の下請け企業を経由して業務が発注される構造のことを指しており、主な特徴として以下のような点が挙げられる。

複数の企業を介するため、最終的な作業者の報酬が低くなりやすい
情報伝達の正確性が損なわれ、品質低下や納期遅延のリスクが高まる
責任の所在が不明確になり、トラブル発生時の対応が複雑化する

IT業界では多重下請け構造が常態化しており、これが賃金上昇を妨げる要因の一つとなっている。フリーランス保護新法の施行は、こうした構造的問題に一石を投じる可能性がある。新法によって取引の適正化が進めば、フリーランスのIT人材がより公正な報酬を得られる環境が整う可能性が高まるだろう。

フリーランス保護新法に関する考察

フリーランス保護新法の施行は、IT業界における労働環境の改善と人材の有効活用に大きな影響を与える可能性がある。新法によって契約の適正化や報酬の透明性が高まれば、フリーランスIT人材の権利が守られ、より安定した働き方が実現するだろう。一方で、企業側には契約形態の見直しや法令遵守のためのコスト増加が予想され、短期的には人材の流動性に影響を与える可能性もある。

今後の課題として、新法の周知徹底と適切な運用が挙げられる。調査結果が示すように、現状ではIT人材の新法に対する理解度は低く、効果的な施行のためには継続的な啓発活動が不可欠だ。また、フリーランスと企業の双方が新法を正しく理解し、適切に対応できるよう、具体的なガイドラインの整備や相談窓口の設置なども重要になるだろう。

長期的には、フリーランス保護新法がIT業界全体の構造改革につながることが期待される。多重下請け構造の是正や、スキルに見合った適正な報酬体系の確立など、業界の健全化に向けた取り組みが加速する可能性がある。同時に、フリーランスという働き方の選択肢が広がることで、育児や介護などの事情を抱える人材の活用も促進され、IT人材不足の解消にも寄与するかもしれない。