INS(Information Network System)とは？意味をわかりやすく簡単に解説

text: XEXEQ編集部

INS(Information Network System)とは
INSの特徴と機能
デジタル統合通信
多重化サービス
高速データ転送
INSの発展と影響
通信インフラの近代化
ビジネス環境の変革
後続技術への影響

INS(Information Network System)とは

INSとは、日本電信電話公社（現NTT）が1984年に開発した統合デジタル通信サービスの名称です。音声や画像、データなどの異なる種類の情報を、デジタル回線を通じて一元的に扱うことができる革新的なシステムでした。INSの登場により、従来のアナログ回線では実現できなかった高速データ通信や複数サービスの同時利用が可能となりました。

INSは、電話やファックス、データ通信などの各種サービスをデジタル技術で統合し、効率的な通信環境を実現しました。これにより、企業や個人ユーザーは、より高度な通信サービスを利用できるようになり、ビジネスや日常生活における情報のやりとりが大幅に改善されました。INSの導入は、日本の通信インフラの近代化に大きく貢献しました。

INSのネットワーク構造は、デジタル交換機を中心に構築されており、各家庭や事業所に設置されたデジタル回線終端装置（DSU）を介して接続されています。この構造により、音声通話やデータ通信を同時に行うことが可能となり、通信の効率性と利便性が大幅に向上しました。INSは、現在のブロードバンドインターネットサービスの先駆けとなる重要な技術でした。

INSのサービスには、主に「INSネット64」と「INSネット1500」の2種類がありました。INSネット64は、最大64kbpsの通信速度を提供し、一般家庭や小規模事業所向けに広く普及しました。一方、INSネット1500は、最大1.5Mbpsの高速通信を実現し、大規模事業所や企業向けに提供されました。これらのサービスにより、ユーザーのニーズに応じた柔軟な通信環境が整備されました。

INSの登場は、日本のデジタル通信時代の幕開けを告げるものでした。従来のアナログ回線では不可能だった高品質な音声通話や高速データ通信が実現し、ビジネスや個人の通信環境に革命をもたらしました。INSは、その後のインターネットの普及や携帯電話の発展に大きな影響を与え、現代の情報通信社会の基盤を築く重要な役割を果たしたのです。

INSの特徴と機能

INSの特徴と機能に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

デジタル統合通信
多重化サービス
高速データ転送

デジタル統合通信

INSの最大の特徴は、音声、画像、データなどの異なる種類の情報を一元的にデジタル処理することです。これにより、従来のアナログ回線では別々に扱われていた各種通信サービスを統合し、効率的な情報伝送を実現しました。デジタル統合通信により、音声通話の品質が向上し、ノイズやエコーが大幅に削減されました。

また、INSは回線交換方式とパケット交換方式の両方をサポートしており、用途に応じて最適な通信方式を選択できます。回線交換方式は、電話やファックスなどのリアルタイム通信に適しており、安定した通信品質を提供します。一方、パケット交換方式は、データ通信やインターネット接続に適しており、効率的な帯域利用を可能にしました。

INSのデジタル統合通信は、ビジネスシーンにおいて特に大きな効果を発揮しました。例えば、テレビ会議システムの導入が容易になり、遠隔地との円滑なコミュニケーションが可能になりました。また、電子メールやファイル転送などのデータ通信サービスも高速化され、業務効率の向上に大きく貢献したのです。

多重化サービス

INSの重要な機能の一つが、多重化サービスです。これは、一つの回線で複数の通信サービスを同時に利用できる機能を指します。例えば、INSネット64では、64kbpsの回線を2つのBチャンネル（各32kbps）とDチャンネル（16kbps）に分割して利用できます。これにより、電話をしながらインターネットを利用するなど、複数のサービスを同時に利用することが可能になりました。

多重化サービスは、ビジネスにおいて特に重要な役割を果たしました。例えば、顧客との電話対応をしながら、同時にデータベースにアクセスして情報を確認するといった作業が可能になり、顧客サービスの質が向上しました。また、ファックスの送受信中でも電話を利用できるため、通信の効率性が大幅に向上しました。

INSの多重化サービスは、家庭用途でも便利に活用されました。例えば、家族が電話で会話をしている間に、別の家族がインターネットを利用してメールをチェックしたり、情報検索をしたりすることができます。これにより、一つの回線で家族全員のコミュニケーションニーズを満たすことが可能になり、利便性が大きく向上したのです。

高速データ転送

INSの大きな特徴の一つが、当時としては画期的な高速データ転送能力です。INSネット64では最大64kbps、INSネット1500では最大1.5Mbpsの通信速度を実現し、従来のアナログモデムと比較して飛躍的に高速なデータ転送が可能になりました。この高速データ転送能力により、大容量のファイル転送や高品質な画像・音声データの送受信が可能になりました。

高速データ転送は、ビジネス分野で特に大きな影響を与えました。例えば、CADデータや高解像度の画像データなど、大容量のファイルを短時間で送受信できるようになり、設計業務や印刷業界などの効率が大幅に向上しました。また、データベースへのアクセスも高速化され、企業の情報システムの性能が飛躍的に向上しました。

INSの高速データ転送は、インターネットの普及にも大きく貢献しました。WWW（World Wide Web）が登場した1990年代初頭、INSはインターネット接続の主要な手段となりました。ウェブページの閲覧やオンラインサービスの利用が快適になり、一般ユーザーのインターネット利用が急速に拡大しました。INSは、現代のブロードバンドインターネット時代への重要な橋渡しの役割を果たしたのです。

INSの発展と影響

INSの発展と影響に関して、以下3つを簡単に解説していきます。

通信インフラの近代化
ビジネス環境の変革
後続技術への影響

通信インフラの近代化

INSの導入は、日本の通信インフラの近代化に大きく貢献しました。従来のアナログ回線からデジタル回線への移行が進み、通信ネットワーク全体の効率性と信頼性が向上しました。INSの普及により、日本全国で高品質な通信サービスが利用可能になり、地域間の情報格差の解消にも寄与しました。この通信インフラの近代化は、日本の情報化社会の基盤を築く重要な役割を果たしました。

INSの導入は、電話局の設備にも大きな変革をもたらしました。デジタル交換機の導入が加速し、通信ネットワークの処理能力と柔軟性が大幅に向上しました。これにより、新しい通信サービスの開発や導入が容易になり、ユーザーのニーズに応じた多様なサービスが次々と登場しました。INSは、日本の通信技術の発展を促進し、国際的な競争力の向上にも貢献したのです。

INSによる通信インフラの近代化は、災害時の通信確保にも大きな役割を果たしました。デジタル回線の採用により、通信の安定性が向上し、緊急時の情報伝達がより確実になりました。また、INSの多重化機能を活用することで、災害時でも複数の通信手段を確保できるようになり、防災・減災対策の強化にもつながりました。INSは、社会インフラとしての通信ネットワークの重要性を高めたのです。

ビジネス環境の変革

INSの導入は、ビジネス環境に革命的な変化をもたらしました。高速データ通信と多重化サービスにより、企業の情報システムが大幅に効率化されました。例えば、支社間のデータ通信が高速化され、リアルタイムでの情報共有が可能になりました。これにより、意思決定のスピードが向上し、企業の競争力が強化されました。INSは、ビジネスのデジタル化を加速させる重要な要因となったのです。

INSは、テレワークやリモートワークの基盤を築く上でも重要な役割を果たしました。高品質な音声通話とデータ通信を組み合わせることで、オフィス以外の場所でも効率的に業務を遂行できる環境が整いました。これにより、企業は柔軟な働き方を導入することが可能になり、従業員の生産性向上やワークライフバランスの改善につながりました。INSは、現代の多様な働き方の先駆けとなる技術だったと言えます。

INSのビジネス環境への影響は、顧客サービスの向上にも及びました。例えば、コールセンターでは、電話対応をしながら同時にデータベースにアクセスして顧客情報を確認することが可能になり、迅速かつ的確な対応が実現しました。また、オンラインバンキングやeコマースなどの新しいビジネスモデルの発展にもINSは大きく貢献し、企業と顧客のコミュニケーションの在り方を根本から変革したのです。

後続技術への影響

INSは、その後の通信技術の発展に大きな影響を与えました。特に、ブロードバンドインターネットサービスの基礎となる技術を提供しました。INSで確立されたデジタル通信の概念や多重化技術は、DSLやFTTHなどの高速インターネット接続サービスの開発に活かされました。INSは、現代のインターネット社会への重要な架け橋となったのです。

INSの技術は、モバイル通信の発展にも影響を与えました。デジタル携帯電話網の設計において、INSで培われたデジタル信号処理技術や多重化技術が応用されました。特に、3G（第三世代）携帯電話では、音声とデータを統合して扱うINSの概念が大いに活用されました。INSは、モバイルインターネット時代の基盤技術の一つとして重要な役割を果たしたのです。

INSの影響は、IoT（Internet of Things）技術の発展にも及んでいます。INSで実現されたデバイス間の高速デジタル通信の概念は、様々な機器をネットワークに接続するIoTの基本的なアイデアにつながっています。また、INSの多重化技術は、限られた帯域で多数のデバイスを効率的に接続するIoTネットワークの設計にも応用されています。INSは、現代のすべてがつながる社会の礎を築いたと言えるでしょう。

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