エア・ウォーターが青果物向け急速冷却システムを開発、極低温技術で1時間での冷却を実現し食品ロス削減に貢献

text: XEXEQ編集部
（記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります）

PR TIMES より

記事の要約

エア・ウォーターが青果物向け急速冷却システムを開発
液体窒素の冷熱を利用し、1時間で急速冷却が可能に
産地や事業者で鮮度保持の実証試験を開始予定

エア・ウォーターが開発した極低温技術による青果物の急速冷却システム

エア・ウォーターは産業ガス事業で培った極低温技術と液体窒素の冷熱を活用し、青果物等を急速に冷却できるシステムを2024年11月26日に発表した。このシステムは従来の機械式冷凍機と比較して冷却時間を8時間から1時間へと大幅に短縮することが可能であり、収穫後の青果物の鮮度低下を防ぐことができるようになったのだ。^[1]

青果物の鮮度保持において最も重要なのは収穫後の早期冷却であり、青果物そのものの呼吸を抑制する必要性が高まっている。近年の地球温暖化に伴う気候変動は青果物の収穫に大きな影響を及ぼしており、特に夏場の高温は収穫後の青果物を劣化させる主要因となっているのだ。

従来の固定式予冷設備は高額な設備投資が必要で、稼働時期が収穫期に限定される一方で年間を通じて高い電気代を負担しなければならない課題があった。新開発された急速冷却システムは可搬式装置であり、必要な時期に必要な場所で使用できる柔軟性を備えているため、小売店舗等のバックヤードでの一時的な仮設冷蔵庫としても活用が可能だ。

急速冷却システムの特徴まとめ

項目	詳細
開発企業	エア・ウォーター株式会社
発表日	2024年11月26日
主要技術	液体窒素の冷熱利用、極低温技術
冷却時間	従来の8時間から1時間に短縮
特徴	可搬式装置、必要な時期・場所で使用可能
用途	青果物の急速冷却、仮設冷蔵庫としての活用

極低温技術について

極低温技術とは、マイナス100度以下の超低温環境を作り出し、制御する技術のことを指す。主な特徴として、以下のような点が挙げられる。

液体窒素などの寒剤を利用した効率的な冷却が可能
蒸発潜熱と顕熱による大きな冷熱供給力を持つ
産業用途から食品保存まで幅広い応用範囲を持つ

エア・ウォーターの急速冷却システムは、液体窒素がマイナス196度で蒸発する際の潜熱と顕熱を利用することで、効率的な冷却を実現している。この技術により、従来の機械式冷凍機では実現できなかった短時間での青果物の冷却が可能となり、食品ロスの削減に大きく貢献することが期待されている。

急速冷却システムに関する考察

急速冷却システムの可搬式という特徴は、設備投資の負担軽減と運用の柔軟性向上という点で画期的な解決策となっている。従来の固定式予冷設備が抱えていた課題である高額な設備投資と年間を通じての電気代負担という問題を解決し、必要な時期に必要な場所で使用できる利点は、特に中小規模の生産者にとって大きな価値を持つだろう。

しかし、液体窒素の安定供給体制の構築や、各種青果物に適した最適な冷却条件の確立が今後の課題として考えられる。品種や収穫時期によって異なる青果物の鮮度保持条件を最適化し、それをレシピ化する取り組みが重要になってくるが、実証試験を通じてこれらの課題を克服することが期待される。

将来的な展開として、システムのレンタルや販売、液体窒素供給ビジネス、さらには鮮度保持技術を活かした輸出や高級食材加工など、幅広い事業展開が期待できる。食品ロス削減という社会課題の解決に向けて、産業ガス事業とアグリ＆フーズ事業を持つエア・ウォーターならではの強みを活かした取り組みとして、今後の発展が注目されるだろう。