産総研が強誘電体メモリの新材料GaScNを開発、低消費電力化と高耐久性を実現へ
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記事の要約
- 産総研と東京科学大学が強誘電体メモリの新材料を開発
- GaScNの結晶性を維持しながらSc濃度を53%まで向上
- メモリの駆動電圧を6割削減する新技術を確立
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産総研が開発した低消費電力強誘電体メモリの新材料について
産業技術総合研究所センシングシステム研究センターおよび東京科学大学の研究チームは2024年12月4日、強誘電体メモリの駆動電圧を6割削減できる新材料の開発を発表した。窒化ガリウムにスカンジウムを従来より高濃度に添加したGaScN結晶の開発に成功し、メモリ動作に必要な電圧を大幅に低減することが可能になった。[1]
研究チームは統計学的手法を活用して作製プロセスの条件を見直すことにより、GaScN結晶内のSc濃度を従来の44%から53%まで高めることに成功した。この技術革新により分極を反転させるために必要な電界を下げることが可能となり、強誘電体メモリの動作電圧を6割削減できる見通しを得ている。
開発されたGaScNは108回の書き込み動作に耐えられる高い耐久性を持ち、これは従来の窒化物強誘電体と比較して約100倍高い世界最高値である。また150℃以下での製膜にも成功しており、メモリセルと演算セルを近接配置できることから、AIチップなどでの消費電力削減が期待されている。
GaScNの新材料の特徴まとめ
項目 | 詳細 |
---|---|
Sc濃度 | 53%(従来比9%向上) |
動作電圧 | 従来比6割削減 |
書き込み耐久性 | 108回(従来比約100倍) |
製膜温度 | 150℃以下 |
抗電界値 | 約1.5 MV/cm |
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強誘電体メモリについて
強誘電体メモリとは、強誘電体の分極を利用した不揮発性メモリのことを指す主な特徴として、以下のような点が挙げられる。
- 電源を切っても記憶を保持できる不揮発性
- 分極の電気的な制御による書き込みと読み取りが可能
- 低消費電力での動作が可能
強誘電体メモリは従来のHfO2系と比較して、残留分極値が4倍以上と大きく、高集積化に有利な特性を持っている。また、スパッタリング法という簡便な方法で環境負荷も比較的小さな方法で作製できることから、次世代メモリデバイスとして期待が高まっている。
GaScNの新材料開発に関する考察
GaScNの結晶性を維持しながらSc濃度を53%まで高めることに成功したことは、メモリデバイスの低消費電力化に向けた重要な一歩となった。この技術革新により、IoTデバイスやAIチップなどの情報機器における消費電力の大幅な削減が可能となり、環境負荷の低減にも貢献することが期待できる。
今後は分極反転のメカニズム解明や基板・電極との界面の強誘電性への影響など、さらなる研究課題に取り組む必要がある。特にトンネル接合型強誘電メモリの実用化に向けては、GaScNの極薄膜化技術の確立が不可欠となるだろう。
GaScNは安定な結晶構造と優れた耐熱性を持ち、大きな残留分極値を示すことから、次世代メモリの有力候補としての地位を確立している。製造プロセスの最適化と量産技術の確立が進めば、強誘電体メモリの実用化が加速することが期待される。
参考サイト
- ^ 産業技術総合研究所. 「産総研:低消費電力なメモリデバイスに貢献する新材料の開発に成功」. https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241204_2/pr20241204_2.html, (参照 24-12-06).
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